風の果て

恋をしただけ それだけのことを

【覚書】いのうえ歌舞伎 蒼の乱@東急シアターオーブ3/27

蒼の乱初日感想。初日のもやっと感がそのまま残ってて、今になって読み返すと面白い。
(2014.07.20)



今さらながら、初日雑感。
新感線の太一を生で見るのも初めてだけど、何より新感線の初日が初体験なのでどんなもんなのかと思っていたのだけど。天下の新感線でも、初日は初日なんだなぁという部分がちょこちょこあって面白かった。なんだろう、だれも悪くないんだけど、大きなハプニングもないんだけど、こなれてない、どこかぎこちない感じ。最近は天海さんとのかけあいがすごい面白くなってるみたいなので、次見に行くのが楽しみだな。早乙女兄弟もまだセーブしてる感じあったから、きっともっと速くなるだろうし(笑)

以下、ストーリー全体と役者さんたちの感想つらつらと。あらすじは割愛。

思った以上に、天海のための蒼の乱だった。もう圧倒的に天海が強い。天海がかっこいい。客席みんな天海好きになっちゃう。対して松ケンのだめ亭主っぷりたるや。悪気のないやつが一番タチ悪い、というかなんというか。もーー後半将門にイライラしっぱなしで、蒼真!そんな男ほっといて坂東はあなたが治めて行くべきよ!って言いたくなるような、トラブルメーカー将門様。いいやつなんだけどね。いいやつだから厄介だよね。悪気なく裏切って、騙されていたと気づくや急にこっち側に帰ってくるからね。もうどんだけ都合のいい男だよバカじゃねーの、そんなやつ坂東民も蒼真もほいほい許すわけが………えっ、許すんかい!!

…っていう話だった。ずっと蒼真の傍らで支え続けた桔梗ちゃんと、裏切られても捨てられても言葉が交わせなくなっても将門の馬として、そして女将門の馬として、戦い続けた黒馬鬼は本当にお疲れ様でした…。面白かったけどね。十分面白かったけど、ここ最近の中でそんなに好きな方の作品ではないかなぁ。蒼真がむちゃくちゃかっこいいんだけど、将門に全然肩入れできないからそこが見ててちょっとつらい。まぁ初日だったしね。次見たらだいぶ印象違うかもしれない。


•蒼真/天海祐希
ちょーーーーかっこよかった。何曲歌ってたかなぁ。ちょっとしたミュージカル風だから、歌声もたくさん聞けるし、なによりそこに立ってる存在感が凄い。主演とは、座長とはこういうものかという圧倒的なオーラ。はーかっこいい。夜叉丸と1対1でやいやい言う場面が多いから、細身の二人が向き合って口げんかしてるのが妙にお似合いで美しかったです。蒼を基調とした衣装もどれも素敵だったなぁ。OPの渡来っぽいのドレスが一番好きかな。強くて賢くて、だけど時々女らしくて、まさに天海による天海のための蒼真。蒼真見ただけで新感線のチケ代払った甲斐があるというもの。


•将門/松山ケンイチ
二度目の舞台…という割には全然見劣ってる感じしなくて凄いなぁと思ったのだけど、前述したとおりとにかく将門のキャラクターが愛すべきアホ通りこして迷惑なお人よしだったので、うーんなんとも…(笑)後半はとにかく将門のキャラクターにイライラしちゃって、イライラしながら見てるもんだから、夜叉丸と太刀影の対決の中に入ってきて太刀影の相手し始めたときは思わず「すっこんでろぉぉぉぉぉ」って言いたくなったよねwいや将門がメインだから将門と戦わなきゃいけないんだろうけど!わかるけど!w
なんか松ケン全然悪くないのに文句ばっかになっちゃって申し訳ないっすね…。あ、蒼真と将門並ぶとめっちゃでかくてかっこよかったです。迫力のある夫婦だねぇ。そのでかい夫婦の周りを小柄な夜叉丸様がうろちょろしてるのも可愛かった。


•黒馬鬼/橋本じゅん
MVP間違いなくじゅんさんだったwwwwww馬wwwwwwww
馬の役なんですよ、じゅんさん。ずっと馬なんですよ。すげぇクオリティ高くて面白い馬なんですよ。こりゃ犬人間を超えたわwwwwもうずっと馬が面白すぎて客席が馬に沸きすぎいて、幕間みんな馬の話しかしてないやばいwwwwカテコの拍手も蒼真に迫るくらいの大喝采で、ほんとに天才だった。蒼の乱は馬の物語だった。蒼真と黒馬鬼の物語でもよかったんじゃないのこれ。


•夜叉丸/早乙女太一
もー登場までじらされるじらされるw派手な登場シーン作ってもらえてて、台詞のないとこでも舞台上で参加してる部分が多かったので太一の出番的にはかなり満足度高い。パンフで「相手によって見せる顔が違う」って書いてたけど、確かに最初の方の蒼真たちと軽口叩いてるときは大衆の太一くんに近いやんちゃな感じだし、常世王とのシーンはクールで誠実な側近だし、終盤の戦いでは大切なもののために戦う強くて悲しい兵士(要するにいつもの新感線の太一くんw)だった。あれもこれも見れておいしい嬉しい。衣装は大きく3パターンかな?ポスター写真の紫の装束すごく好きだったんだけど、後半の蝦夷っぽい柄の入った衣装の方がさらに可愛かった。腰の部分がベルトで1回絞ってあって、身体のラインがきれいに出るんだよね。
台詞喋ってる時も戦ってるときももちろん好きなんだけど、メインキャストが喋ってる時に横でじっと話を聞いていたり、呆れたような顔したり、細かい芝居してるのが一番好きだった。朝廷軍に捕まった時、後ろでに縛られて座り込んでる夜叉丸の伏し目が切なくてねぇ。長い前髪効果もあって切なさ倍増ですよ。切ない太一くんほんと好き。将門から奥の大殿の話聞いた時の「俺たちは殿の出自を知っていた!」って叫ぶのを聞いたときは、あぁこのままじゃまた仲間のために戦って死んでしまうぅぅぅぅって思ったんだけど、今回は生きててくれてよかったです。つらい生き残り方だなって思ったけど。仲間を失なって、あんなに慕ってた常世王も守りきれなくて、それでも最後の一人になっても蝦夷のために王のために戦って。最後、蒼真たちと一緒に将門たちの首を取り返す夜叉丸を見ながら、生きのびることを命じられて生きる選択をしたももちゃんが少し重なった。


•太刀影/早乙女友貴
1幕後半。「太刀を持たぬお前など」と夜叉丸になじられた左大臣の、「私の太刀は、影なのだよ」が合図。洋風の赤と黒の軍服(かわゆかった><)に身を包んで飛び出してきた太刀影相手に、突然トップギアに叩き込まれる高速殺陣。1幕のゆっくんの出番これだけなんだよね。いきなり3倍速みたいな動きが展開されて、途中で止めが入って夜叉丸が撤退してそこでもう場面転換。一瞬だけ出てくる謎の剣士。インパクトあってよかったなぁ。ここがっつり戦ってる時間はわずかなんだけど、短い分ものすごい速さ出せるからすごく面白かった。
2幕になるとそこそこ喋るし(思ったより台詞あった!)、殺陣も多くて感動した。顔も声もお兄ちゃんそっくりで、知らない人が見たら初見で夜叉丸だと思っちゃうんじゃない?大丈夫?って心配になるくらい瓜二つだったけど、長く喋ると「あ、これ太刀影か」ってわかっちゃうのはご愛嬌かな(笑)でも聞き取りづらいとかはほとんどなかった気がするー。太刀影は、最初から最後まで左大臣の忠実な「太刀」だった。戦うために存在してた。全体に感情らしい感情が見えない。「左大臣を守る」という目的は強く持ってるけど、「左大臣を守りたい」わけではないような。だから最後の夜叉丸との一騎打ちも、怒りとか悲しみとかいろんなものが混ざってる夜叉丸の剣と、淡々と戦う太刀影の剣から会話が生まれないのが残念といえば残念。あの二人は剣に感情載せた方がもっと凄い殺陣やるのになぁ。ただ、自らの意思で動いていた場面もあったし指揮をとる部分もあったから、もっと注意してみれば太刀影にも何か見えるかもしれない……ので、そこは次観劇するときの宿題(笑)。しかしあっけない最期だったなぁ。蛮幽鬼の刀衣の死に際とか本当に切なくて苦しくてかわいそうでたまんなかったのに、そういうのは全然なかった。16日にもう1回見るのが一番楽しみな太刀影。


•祐也くん&僚くん
最初の、朝廷側の兵士役で出てくるとこ。マスクしてても目元で僚さんはわかるし、顔は確認できなかったけどうなづいただけで祐也くんすぐわかった。やっぱ動き知ってると探しやすいんだな。僚さんはともかく、祐也くんは太刀影の馬役というスマッシュヒットがあったのでwもう馬といえばじゅんさんか祐也くんかというくらいにツボだったwwwwwすっごいクオリティ高いの。その場面で馬そんなに馬らしくしてなくていいのに、無駄にハイクオリティなの。笑いたいのに真面目な場面だからこらえるしかなくて、ほんと腹筋死ぬかと思ったwwwwすごいなぁ祐也くん、仕事出来る人なのはもちろんだけど、なんか斜め上の秀逸さがある。


•その他
早乙女兄弟殺陣以外でさすが!って思ったのは、夜叉丸VS川原さんの八幡。やっぱ本家本元JACは速いわー。新感線おなじみの川原さんが相手になると、新感線!って感じがしていいね。新感線はリアルな殺陣が求められるから普段やってるのとは全然違うと太一が言ってたけれど(普段の殺陣は美しく見せる殺陣だもんね)、そのリアルさが川原さんから出てる感じ。太一VS友貴だとどうしても現実味が薄いというか、本気出せば出すほど人間じゃないなにかの戦いにしか見えなくなってくるからwwなんであの子たちはあんな浮世離れした雰囲気になるんだろうなー。そもそもが浮世離れしてるからかもしれんけど。
あと好きだったのがみはるさんの邦香ね。かわいかったー><幽霊としての登場シーンはちょっと蜻蛉峠のヤクザIN HEAVEN思い出して笑ってしまった。キュートで一途な幽霊だった。