風の果て

恋をしただけ それだけのことを

なかやざき『フランダースの負け犬』7/13ソワレ@シアターサンモール

時間があったら観に行こうと思っていた、なかやざきの「フランダースの負け犬」をぷらっと見てきた。うーん……微妙な不完全燃焼感なのだけど(良い悪いじゃなくて、これ自分の好みの問題だと思う)、役者陣はみんなかっこよかったし上手かったし、矢崎と浅香がほんとかっこよくてね!!当日券抽選でまさかのB列ほぼドセンで観劇という目のやり場に困る事態だったのだけど、おかげで目の微妙な変化まで全部見れた。矢崎すーごい細かい芝居するのね。凄い寂しい目で威圧的な態度取ったり、怯えながら平静を装ったり。明るい芝居してるともちろん凄く可愛いのだけど、イケメンな芝居してても超かっこいいのだけど、暗いシーンが凄く良くて、あぁこれは太一と相性いいだろうなと思った。なんとなく。あと圧倒的に華がある。



乱痴気の感想読んでるうちに、やっぱりちゃんと感想残した方がいい気がしてきたので、すでにおぼろげになった記憶をたどりつつ。

中屋敷さんて元々凄く評判いいから、どんな感じなんだろうってわくわくしながら見にいって、「あ、合わない」って思った瞬間のショックが割とでかかったんだけどね(笑いのツボも泣きのツボも合わないんだと思う)。裏切りがなかったからかなぁ。お話の中で裏切られる人はいるけど、そうじゃなく、見てるこっちが「えぇぇぇそうだったの!?」ってなるような裏切りが。あーそうだよね、うんそうなるよね、うんうん…え、そのまま終わるのかい!って感じだった。それはそれでいいんだろうけど。
そんな私の個人的な話はさておき。合う合わない関係なく、本当に役者陣が素晴らしかった。あと中屋敷さん初めましての私でもビシバシ感じるくらい、愛にあふれた作品だった。お話の内容が愛にあふれてるかといえばそうじゃない。ハッピーエンドともバッドエンドとも言い難いし、戦争ものだし厨くさいのに、矢崎広が圧倒的に輝いてる舞台だった。そして矢崎広は予想の何倍も素敵な役者さんだった。若手舞台俳優界の超売れっ子であることに納得した上で、これ以上絶対に近寄らんようにしようと思った。危険だこれはww

小さなシアターサンモールの舞台に、でーんと鎮座するハートをかたどったオブジェみたいな舞台装置。客席の前半分がまったく傾斜のない劇場なので(これオレノカタワレの時一般枠で入った方が勝ち組かもなぁ)、その装置が舞台上に傾斜を作ってくれてた。この客席じゃ、舞台の奥行使えないもんね。セットも演出もシンプルだけど、音の使い方が上手くて好きだった。音楽の選曲も流れるタイミングも好き。


何から書こうか。まず宮下くんかな。宮下くんのバラックはテンションに慣れるまで少々時間を要するけど(途中から慣れたw)、馴染んでしまえばとっても愛くるしくて憎めないバカで、その愛され度ゆえに最後が本当に切なかった。バカだけど、バカの使い道を知ってる賢いバカだった……というよりバカじゃなかったんだと思う。落ちこぼれだけど、自分が置かれた立場もそこから逃れられない現実も全部わかった上で、ちょっと捻くれながらバカやってるようなイメージだった。そのちょっとだけ捻くれた部分さえヒュンケルと過ごすうちに真っ直ぐ伸びて、真っさらに美しく死んでいった人だった。私はフランダースの犬に関してはヒュンケル派で(パトラッシュを殺せと思ったことはさすがにないが、拾ったお金自分で使えばよかったのにとは思ってたし感動もしなかった)、そういう意味では元ネタよりバラックとヒュンケルの最期の方がよほど泣けたかもしれない。涙は出なかったけど、ただただ切なかった。悲しくはなかったな。序盤ハイテンションで気持ち悪い(褒めてるw)やつだったバラックが、110分の間にどんどんどんどん愛おしくなっていくの凄い。

そして相対するところにいる、超エリート生・ヒュンケル。かっこよかったー。かっこよくて何でも出来て上官からも気にいられている、ドイツ最強の将軍を目指す野心家でありながら、ベルニウムみたいな明るいお調子者と親友ってのもいい。なんだかんだで可愛いイケメン。プライドは高いし自信家だけど、良い奴。ベルニウムが、浅香演じるクレーゼルとヒュンケルが良きライバルとして育っていくのを賞賛して「若く才能ある2人」って表現を何度も使うんだけど、「若く美しい才能ある2人」にしてほしくなるくらい、矢崎と浅香の並びがそれはもうかっこよかった。2列目で見る高身長イケメンたまらん。浅香きゅんは8人の中で際立って目を引く人ではなかったけど、とにかく顔がかっこよかった。さすが元JJ。

話がそれた。矢崎に戻って、これだけは絶対書き残したかったこと。泣けなかったって言ったけど、1か所だけぶわっと泣きそうになったのが、ヒュンケルが友人二人を罵って別部隊に異動させるところだった。親友2人を切り捨てる瞬間、口では酷いこと言いながら目にいっぱい涙溜めてた矢崎に震えたわ…。2列目だったから細かい目の芝居全部見えて、固い表情は変えないまま目だけが辛そうで苦しそうで、釘づけだった。綺麗よぴろし…。このシーン以外にもそう感じた部分は何か所かあって、中屋敷さんがインタビューで「感情が混ざって自己矛盾していたり、中途半端な部分がすごい人間らしいところなので。 単純に「すごく泣く芝居、すごく怒る芝居」という大味にならない、矢崎くんの複雑な旨味の部分をたくさん出したいと思っています。」って答えてたのはこういう部分なのかなぁと想像してみたり。
レーゼルは自分から志願したとはいえヒュンケルのことは好きだっただろうし、ベルニウムに至っては離れる気など全くなかったのに、わざわざ切り捨てたのは、何を予想してのことだったんだろうなぁ。実際の戦闘のなかで周りの状況を完璧に抑えて撤退も主張してたとこ見ると、ちゃんと生きて生き延びて勝つつもりだっただろうに、それでも二人のことは降格させてでも逃がしたかったんだろうか。そうじゃない気がする…うーん。

最後、結果としてバラックは死んでしまったのに、それでもヒュンケルは殺された。最初からそのつもりだったのか、本当にバラックを撃ち殺せたらヒュンケルは連れて帰るつもりだったのか。撃てないヒュンケルがよかったなぁ。カテコなしで、そのまま主演不在で幕が下りる終わり方は好きだった。射殺シーンが一番最後にくるから、さっき死んだ人間がカテコで歩いてても冷めるしね。


あとぜんっぜん知らないところからいきなりヒットくらったのが池田純矢くん。ヘンチュの出番が後半だから序盤は生徒の1人だったんだけど、ヘンチュ降臨してからが凄かった!「え、なにあれ誰だこれ」ってなって顔を目に焼き付けて、終わってそっこー名前確認したわ。まだ21歳だって。上手かったなぁ。びっくりした。ヘンチュさん終始凄いイキイキしてて、オネエ口調もキレッキレでよかったわぁ。あれ、メイクつけまつげしてたかな?ヒュンケルさんべったべた触りながらまとわりついてるのとかリップ音とか妙に色っぽくて、気持ち悪さとエロさの狭間で、かつ狂気っていう凄い役だったw楽しそうに芝居する子だなぁ。乱痴気のヘンチュが浅香だったらしいけど、それが全然想像できないくらい池田くんのインパクト強かった。ちなみに乱痴気の池田はベームさんだったとのことなので、それはそれで観たいw気持ち悪そうで良い。


面白かったなー。
………面白かったんじゃんねwなんだろう、思い返すとこんだけ書けるくらいには楽しかったのに、何がダメだったんだろう。けど、なんだかんだ楽しかった。行って無駄ではなかった。お金と時間の都合でぴろしにはもう近づかないと決めたので、また太一の舞台に出てください、そこで会いましょう(笑)