風の果て

恋をしただけ それだけのことを

一万年後も君は世界でいちばん美しい 8/10ソワレ@シアターウエスト

行こうかどうか悩んで、踊る太一が見たくて結局1公演。行ってよかった……っていうか夜だけじゃなく昼から行けばよかったぁぁぁぁ><日程的にもう増やせないのが残念すぎる!凄い良かった凄い楽しかった!好きなものに当たったのが嬉しくて楽しくて顔が笑っちゃう体験はヒミズ以来かもしれないw
東京藝術劇場お初だったんだけど、劇場前のフリースぺースが広くて椅子もいっぱいあって、綺麗でよかった!シアターウエストの椅子もなんだかちょうどフィットして快適であった。あと今日はストリッパー班の稽古がおやすみだったからか、みなさんお揃いで最後列でご鑑賞されていた。祐也くんの髪色、目立つねw


ベースは三島由紀夫版の「卒塔婆小町」…に、どうやら夢十夜の第一夜をミックスしてるらしい。三島版卒塔婆小町あらすじだけざっくり予習していったのに、終盤わからないところがあったのが夢十夜部分だった。夢十夜は、それをベースにした短編オムニバスの映画ユメ十夜を見てるんだけど、第一夜さわり読んでも全然思い出せないー。窓の外に観覧車が見えてたのだけ覚えてるなぁ(笑)来月実家帰ったらおとーさんの本棚漁ろう。

綺麗な舞台だった。そんなに頭を使わずに考えるな感じろ精神で見ていたせいかさほど難しいとは思わなかったんだけど(もちろんがっつり勉強したうえで見たらもっともっと面白味はあるんだろうけど、表面なぞる分にはあらすじ読んどくくらいで大丈夫だった)、感情面よりはただただその光景の、音の、声の、動きの美しさを浴びまくれるって印象。感情移入する先がなかったのかな、哀しいとか切ないとかは思わなくて情は全然動かなかったけど、ずっと興奮状態で見てた。いろんな種類の美しさをぎゅーっと詰め込んだみたいなお芝居。
細かい話書いてると5万字くらいになるし観劇1回じゃ補えないので、覚えてること感じたことだけばばーっと。それだけ書いておけば、人間読み返したときに案外残りの部分も思い出せるものである。感想文にもならない代物。



最初から最後までずーっと太一くんが綺麗で。キャパ270だから双眼鏡なしで挑んだけど、表情は多少ぼやけようとも頭のてっぺんからつま先まですべてが綺麗な太一くんを80分ずーっと見ていられるというだけでも価値のある舞台だった。久々のストレートの黒髪と、ナチュラルメイクと、一人称が「僕」なことでいつもより数段幼く感じて、まだ若者というより少年みたいな詩人が可愛くて可愛くてたまらなかった。そして美由紀さんが凄かった。女優としての美由紀さん初めて見たんだけど、綺麗でびっくりした。老婆と少女がころころ入れ替わる役柄を、老婆でも少女でもない中年女性3児の母があれだけ違和感なく演じきってるってことにまず圧倒されて。二人しかいないからずっと太一見ていたかったのに、美由紀さん出てきてからしばらくはついそっち見ちゃったもんなぁ。美少女の美由紀さん本当に可愛かった。あんなにきゅんきゅんしたラブシーンは久しぶりだ(笑)


んー何から書いたらいいだろうか。冒頭しばらくは太一くん演じる詩人の青年の一人芝居で。後ろ短めにばっさり切った黒髪に、緩めのジャケットにパンツ。ジャケットの袖折り返して、インナーのシャツ見せてるのが可愛い。ほぼすっぴんだからちょっと顔があっさりしすぎてるんだけどww、日サロ焼けも醒めて本来の超色白美肌太一くんでまぁ美しい。横向いたときの顎のラインも、立ったり歩いたりの所作一つ一つも、もちろん手も、何をどうしたら舞台上ですべてをあんなに美しく見せられるのだろうというくらい身体も動きも全部美しかった。あれは強みだよなぁ。
そしてもう一つの武器…というか、中屋敷さんがゴリ押ししてた声。ちょっと高めの明るい声も笑い声も、22歳男性にしては細い歌声も、寂しそうな低めのトーンも将校になってるときの強めの声も、色んな声音が聴けて幸せだった。あれ全部録音して売ってほしい。イヤフォンから直に脳みそに流し込みたい。そしてそのまま悶絶して死にたい(まがお)。極めつけは鹿鳴館のダンスシーンで美由紀さんと入れ替わるところで。和と洋の違いはあるとはいえ女性の動きの型はもちろん綺麗だし、弁天ボイスでの「さぁ、踊りあそばせ」からの女役でのダンスがほんとーーーーに色っぽくて可愛くてどうしようかと思った!この演出はちょっと変態度高すぎるだろう!最高だな!!くるくるっと回って美由紀少将の腕に収まった瞬間の太一小町の仕草の愛らしさといったら、男にこれができるならもう女いらねーんじゃないのレベルだったわよ。死ぬかとおもったわ。っていうかたぶん80分の間に5回くらい死んだわ私。


冒頭の一人芝居部分は基本的に寂しくて自虐的な雰囲気で。涙ぐんだり手のひらで顔覆ったり、わんこ撫でまわしながら切なげに微笑んだりしながら、切なくも穏やかな口調で語る詩人の青年。美由紀さん登場までどれくらいあったかなぁ?かなり長くて、その間太一オンステージだからもうひたっすら穴が開くほど見つめてた。太一綺麗ー。この時点で楽しくて楽しくて、っていうか出てきてド頭で「ベンチの恋人たち」口ずさんでる時点でやばいじゃん。絶対好きなやつじゃん。自分の体に腕回してしゃがみこんで顔うずめたときの、背中から立ち上る寂しさが太一くんの真骨頂って感じがする。寂しい役の時が一番好き。

中盤はそこに現れた九十九年生きる老婆とのかけあい。これ近未来の東京の設定なのかなぁ。美由紀さんはベールで顔覆って見えないようにしてるんだけど、声の迫力が凄くて明らかに異様な老婆の存在が強すぎて、美由紀さん出てきてしばらくそっちばかり見てしまった。そんな老婆に初めは戸惑いつつも、割とフランクに話しかける青年。播磨様とはまた違った感情の豊かさで、ナチュラルな表情の変化がなんだか微笑ましい。しゃがみこんで老婆の顔を覗き込む仕草も可愛かったなぁ…。しかしこのターン割と長いので、私は凄い楽しくて仕方なかったんだけどダメな人はダメだと思う…w
「ばぁさん、昔の話をしてくれよ」とせがむ青年に、昔は「小町」と呼ばれた美人だったと話す老婆。美しかった過去を語り、年老いた今の自らを「醜い美女」と称する老婆に青年が言う。

「一度美しかったということは、なんという重荷だろう」

正直興奮しすぎてセリフとかほとんど覚えてないんだけど、この一言のインパクト凄くてこれだけ必死で記憶して帰ってきた。どうも三島原作そのまんまっぽい。


自分を愛した男がみんな死んでゆく、100年後の再会を誓って。言ってはいけない愛の言葉。その言葉を言ったら、あなたは死んでしまう――。


美由紀さんが少女の姿になるシーン。ベールを外すと「小町」に、被ると腰の曲がった老婆に。少女も老婆もどちらも美由紀さんの本来の声ではなくて、それがコロコロと切り替わる様子に圧倒される。美少女を演じる美由紀さんの二の腕は本来の年齢にふさわしいそれなのに、そこで踊るのは可愛らしい女の子で、演劇って凄いと思った(頭の悪い感想)。

昭和14年、美しき少女小町の元に通いつめる深草少将。百夜通いの100日目。ついに結ばれるその喜びと一抹の寂しさを胸に小町に愛を囁く少将。小町の「さぁ、踊りあそばせ」を合図に始まるダンス。美由紀さんのダンスが綺麗だったー。
雷のようなBGM。入れ替わる二人。美由紀少将が男前。小首かしげる太一小町が鬼ほど可愛い。禁断の言葉を言おうとする少将を遮り、小町が誘う。

「さぁ、踊りあそばせ。踊りあそばせ!」

さっきと同じ振り付けが、入れ替わった状態で繰り返され、そしていつの間にかもとに戻る。なんだこの美味しすぎる展開はw
小町を後ろから抱きしめる少将が小町以上に綺麗で、踊る二人の笑顔が幸せで可愛くて、こんなにときめいたラブシーンいつ以来だ。ほんとにきゅんきゅんした。たまんないなー。



小町の静止を振り切り、言ってはならない言葉を口にする少将。
倒れる少将と縋る小町から、時間軸は詩人と老婆の元へ。ここで例の夢十夜の件が入るんだけど、今はちょっと割愛。一人二役で朗読する太一くんの声をお楽しみいただけるので、元の内容知らなくても楽しかったw

過去の記憶がよみがえった青年は醜い老婆に対して言ってはならぬ言葉を告げようとする。老婆が必死で自分の今の醜さを主張したって、青年には届かない。
そして冒頭、犬と語らう青年のシーンへ。違うのは、美由紀さんが犬であること。実は青年とずっと一緒にいた小町。犬の姿ならあの言葉を言われることはない。そう思っていたのに、老婆になっても犬になっても見つかってしまう。どんな姿になっても青年は小町を見つけ出し、幸せに満ち溢れ死んでゆく少将。そしてまた100年。

「100年が100度で一万年」

一万年後もきっと青年は「君は美しい」と囁き、小町はまた100年再会を待ち続ける。永遠に終わらない愛と美の無限ループ。最後は待ち続ける美由紀さんの独白で終了。



通常カーテンコールの後、粘り勝ちした三度目で笑った太一の、はにかんだような甘えたような顔が一番可愛かった。