風の果て

恋をしただけ それだけのことを

月髑髏終演に寄せて<下弦の月編>

若さと勢いで突っ走る上弦に対して、丁寧に繊細に王道の髑髏城を築き上げていた下弦チーム。下弦なくしてあの上弦は生まれなかった。素敵な千穐楽だったようで、本当によかった。

私そもそもずっと髑髏城そんなにハマれないおたくだったので、たぶん下弦の良さは3分の1も理解してないと思うんだけど。下弦はとにかく蘭が面白くて面白くて仕方がなくて、蘭をこねくりまわしてる時間だけでいうと上弦より下弦の方が断然長いってくらい、ちゃんともの蘭が好きだった(みうらんのことはもっと好きですけど、思考の8割を「顔が可愛い」に持っていかれるので、あっちはそんなにこねてないですw)
上弦の方に書いた福士くんが選ばれた話ってちゃんともにも当てはまると思うんだけど。すずひろ先生は誰も文句ないとして、殺陣が上手くて綺麗な若手俳優がゴマンといる中でなぜ殺陣経験値の低いちゃんともが、わざわざ”あの”すずきひろきの対になるポジションに選ばれたのか。パッと思いつく理由がなくて、だからこそ一番楽しみにしてた部分でもあったのね。そしたらあんな蘭が生まれちゃうんだもん。つくづく選ばれるには理由がある。(という話を書いてる途中で「弊社の腐女子」というパワーワードが流れてきて、なんか一気にいろんなことが腑に落ちたけどww、なんにせよちゃんともの蘭は凄かった。ほんとに好きだった)


  • きりちゃんという希望

正直下弦はきりちゃんがいなくて沙霧とのほのかなラブありだったら、初期のハッピーエンタメのまま最後まで行ったと思うんだけど、「手を離したらそのまま死んじゃいそうな捨之介」とその救済としてのきりちゃん、という月設定は取り込まれてしまったため、後半戦は随分とほろ苦い話になっていた。
大人だからね。そんなに頑張れないよね。子どもたちの、あの泣きわめきながらでも這い上がる強さはもうないのだ。それでも踏ん張らないといけない状況の中で、捨を明るい場所に引きずり上げるきりちゃんのパワーは希望だった。最初の頃は、周りのことまで自然に元気にしてくれるような、とにかく元気で強い子ども。後半は、子どもの強さと熊木の長にふさわしいリーダーシップや知性を兼ね備えたとんでもない爆モテに成長してしまい大変だった(私が)。中の人が超若いだけあって、3か月もあるときりちゃんという役自体もリアルに成長していくのが面白かった。下弦の裏主人公は間違いなくきりちゃんだ(上弦はたぶんてんまちゃん)。
警戒心強くて常に周りにアンテナ張り巡らせてるようなきりちゃんが、捨の手を取る瞬間が好きだったなぁ。安心できる場所、大切にしたい場所を見つけた瞬間。

  • 交わらない三人と「殿」の話

下弦交わらない問題の話はこれまで散々してますが。その分、他の髑髏以上に明確に「殿」で結びついていた3人なのかもしれない。本編に登場しない殿の存在感が強くて、そこに描かれていない背景や心情を探る楽しさをくれるあたりは、さすがの舞台班チーム。
私最後までどうしても下弦捨のキャラクターに愛着を持てなかったんだけどw(マモ自体はもちろん好きだよ!)、それは私が完全に天蘭サイドに立って見てしまってるからなんだろうなぁ。ちょっとずるいなって思っちゃうんだよね。捨には髑髏城に一緒に乗り込んで戦ってくれる仲間がいて、その先も一緒に生きてくれるきりちゃんがいて、それなのに一番傷ついた顔してるから(笑)過去に囚われることで、目指した「天」の姿をよりどころにすることで8年生き延びて這い上がって、それであんなプライドずったずたの倒され方して、残された最後のプライドで選択できるものが自害しかなかった天魔王はどうしたらいいんだよ。
基礎設定は上弦も同じなんだけど、下弦は過去に仲良かった姿がどうしても浮かばなくて、天蘭の関係性も最後までドライなのでひたすら天魔王がかわいそうなんだよなぁ。徹底して強気のまま死んでいくから余計に。蘭はね、あいつだけ勝手に幸せになるから、もう好きにしてくれって思えるんだけど(笑)。
殿をまっすぐ慕い従って捨と、殿が追い求める理想に恋い焦がれた天と、全身全霊で殿を愛した蘭と。その中心にいた「殿」を抜き去ったらこんなふうになっちゃったんだろうか。と毎回何とも言えない気持ちになっていた。

沙霧OUTと年齢差の都合により、男女間の恋愛要素がぐっと減った月髑髏において、唯一大人の恋愛を描いてくれた二人だなぁと思ってる。 (下弦の蘭極はいちゃついてるけど恋愛関係ではない…姉と弟というか、姉妹?wみたいなイメージ)
無界襲撃でも蘭の最期でも、凄惨なシーンにおける無き崩れる太夫の悲痛さと兵庫の抑えた芝居がとてもよくて、そんな二人が最後に手を取り合って、仲間の分まで一緒に生きていこうとするのが下弦における「強さ」なんだと思う(上弦はもっと物理的に強いw)。上下合わせて一番のいい男って、なんだかんだで木村兵庫だと思ってる。うまいもん食って笑って生きていってほしい二人。

  • 結局あの蘭はなんだったのか

なんだったんだろうな……(迷宮入り)

親切設計の下弦チームの飛び道具。ハイホスピタリティが売りなのに、ちょっと刺激が強すぎない?お野菜たっぷりの豆乳鍋をいただいてたら、いきなりハバネロぶっこまれたみたいな衝撃だったけど??(しかも終盤で結構変わったのでいよいよ混乱させられたまま終わったw)何をしでかすか読めないびっくり箱みたいな人だった。それでいて全体を崩しはしないギリギリのラインを掠めていくのがなかなかの妙技。感情表現全部激しめの蘭のリードを、がっつり引っ張る天魔王様の飼い主ぶりも好き(笑)
最初は本能寺の変のあとに生まれた新人格が蘭兵衛っていう完全別人格パターンかなと思ってたんだけど、最終的に無界にいるあのふんわりさ(ふんわりしすぎて妙に幼いのがそれはそれで狂気だったw)も、二幕での暴れん坊っぷりもそもそもの蘭丸が持ってたもので、無界にいるときはその後者の側面だけが抑え込まれただけだったのかなという結論に落ち着いた。あとから増えたのが蘭兵衛なのではなくて、残った部分が蘭兵衛。寝た子を起こす役割をしたのが夢見酒。ぱっと見美少女のくせに何かと気性烈しめの蘭、見てて楽しかった。終盤なんてみうらんよりよほど狂犬だった(笑)

下弦は本当にずっと蘭に夢中だったし、ちゃんともにはもっと夢中だった。たぶん、パッと見の印象よりも緻密に計算してお芝居するタイプなんだろうなと思うんだけど、思考経路が常人には絶対たどり着けないルートを通っているから、出力されるものだけ見ると二度見するような事態が起こりがちなんだろうな…w私はちゃんとものことまじで狂人だと思ってるけど、こんなに愛され型の狂人もなかなかいない。これからもずっと、あの事件性の高いメールを毎晩送りつけてくるちゃんともでいてほしい(笑)


最後に、下弦で廣瀬蘭堕ちした皆さんへ。
セブンデイズを観よう。
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芹生大好き芸人からは以上です。