風の果て

恋をしただけ それだけのことを

美しい繭期でした

終わっちゃいましたね。久しぶりにどっぷり繭期で楽しかった。
これは東京楽の後にも少し書いたけど、見事な「TRUMP 10th Anniversary」としての二作上演だった。月も過去シリーズ以上にTRUMP本編と地続きだし、星は裏とらんぷだし。それでいて月は完全に新しいテイストだったし、星はベースであるTRUMPがめちゃくちゃ面白い作品であることを改めて思い出させてくれて(さらに+αのしんどさも加わり)、ちょーーーー楽しかったな、コクーン

作品単体としてはグランギニョルとマリゴの完成度の高さが振り切れてると思ってるけど、この繭期の子供たちの毎日変わるぐっちゃぐちゃな感じがこのシリーズの醍醐味だよなと改めて。月が自分で見た東京21と25で全然違ったんだけど、大阪はもっと別物になってたと思うので、映像化されるのがライビュのタイミングのものだけなのがちょっと寂しい。でも、そういう「円盤になってる作品だけど円盤に収録されていないもの」がおたくの口伝で伝わっていくのもまた醍醐味(笑)
ここから先はまた、大人たちの物語になっていくと思うので、その前に原点である「ぼくたちのクラン」をこんな強いカードが乱れ舞うキャスティングで見れて本当に良かった。

全体を通してこねくり回したいことはたくさんあるんだけど、捏ねてアウトプットする気力がないのと、単純に東京公演から時間が経って記憶が抜けかけてるので、取り合えず書き残しておきたいことをバーッと。観たものの記録じゃなくて、それを見た私の思考の記録。


  • 五家の話

あまりにも最高の新キャラ達だったので、この先短編小説とかでもいいからその後が描かれることを願ってやまない。越繭してちゃんと大人になったジュリオとエミールの話。ヘルクランに入れられた繭期は越繭したらどういう扱いになるんだろう。正気に返ったら普通の生活に戻れるのかな。ディエゴ超元気そうだったし、師匠くらい長生きする可能性もなくもないのか。ラファエロたちと出会う前から平和で退屈なクランでふつうに友達としてつるんでた時間も、5人で屋上で夕日を見たあの短い青春の1ページも、せめてジュリオとエミールの中で幸せな思い出として生き続けてほしい。
しんたがガンガン飛ばしてたのと、それとガッツリ組み合えるあらやん先輩の配置のせいでなんかラファアンのヤバさばかり言及しちゃうんだけど、碓井くんもめちゃくちゃ上手い人だし、しゅーとくんもさすがの安定感で、五家本当によかったな。とーるちゃんがその中で遜色なく立ち回っていたのも。私碓井くんがぴろしとやった「女中たち」が好きで好きで好きで、好きすぎて円盤見れないからあの日観たものが脳内で美化されながらどんどん煮詰まっていっちゃってるかわいそうなおたくなんですけど。今回キャラクターは全然違えど、あの時の「息をするようにするっと怪演する人」という印象をふと思い出す瞬間が多くて、やっぱりこの人のお芝居好きだなと思った。養護室でドナテルロと会話してるときのラリった状態と正気の切り替わり毎回怖くて最高だった。

  • ドナテルロの話

まずドナテルロお前はどんな顔してあの回顧録書いてたんだ。いや起きた事象としての嘘はないんだろうけど、ニュアンスがだいぶ違うだろ。でも当時からすげーーーミケ様のこと目障りだったんだろうなというのはなんとなく文章からも察せられるのが面白いな…。幼馴染への初恋(概念)拗らせはフラ家のお家芸だと思ってたのに、とんだ伏兵がいたもんだ。月時点では完全に推しの成長が解釈違いだった限界オタクなので、シリーズ屈指のド変態が何故寄りによってこんなオタクの心に響く方向の変態性を持ってしまったのかと。コクーン投与する生徒選んでるって言ってたけど、ディエゴとか多分出会った瞬間おたくの勘で「こ、こいつだー!」となったんだろうな、心のわかるボタン100回押しちゃうな…と思いながら見ていた。ラファエロは本人がバランス崩してる状態みてピンと来たのかもだけど、ディエゴは絶対一目見てわかったでしょ。わかる…(ド変態と共鳴するおたく)
ドナテルロ、死んだとは思えないのでどっかでまたひと悶着起こしそうだし、ペンデュラムあたりには絡んでくるんだろうから、その時はまた圭ちゃんに帰ってきてほしい(笑)おじさんたちの愉快な舞台裏も超楽しくて、ティーチャーたち繭期期間の和み要素だったな。

グランギニョルで一気に複雑さが増してしまった人たち。いや本人たちからしたら変わらないんだけど、見てるこっちの感情は違うじゃないですか。ウルは絶対的にラファエロの弟だし、アンジェリコちゃんもゲルハルト様そっくりで実の息子としか思えないんだけど、ウルとアンジェリコの、パーソナルスペースにぐいぐい入ってきて大好きを至近距離剛速球で投げつけてくる感じとかもほんとそっくりで笑ってしまう…いや笑えんけど…。ラファアンがダリとゲルハルトのような関係になれたら、年上二人が両側からウルを可愛がるような未来もありえたかもしれないけど、親と子は違う生き物なのでそれは無理というものなんだよな。グランギニョルのラストシーンでゲルハルトの顔をしたから覗き込んで笑ったダリちゃんの、あの村焼きタイプの人たらしっぷりがラファエロに遺伝していたらもう少し……いや、それこそアンジェリコがもっと初恋拗らせちゃうからダメかなw
繭月における愛されたかった二人、「自ら選んだ」という意識の元に最後までウルの守護者としてデリコの重圧と父に見放される恐怖と対峙し続けるラファエロの不憫な長子気質も、方向性はどうであれどこまでもアッパーな拗らせ方をしていくアンジェリコもそれぞれに”らしい”のだけど、私は自分が長子なせいか、真逆の位置にいるアンジェリコちゃんのあの暴走型の孤独がなんだかとても好きで、抱きしめたくなってしまう。今回ウルも含めた子どもたちが本当に「子ども」だったの、エグさも愛おしさも増し増しだったな。

あと今回突然投げ込まれたラファエロの母親似設定めちゃくちゃ好きで、各SNSラファエロのお写真流れてくるたび、「母親似~!!」って謎の興奮を得ている。あらやん先輩顔が女児だから説得力がすごい。これはフリーザ様の面影ありまくりですわ。デリコの家族写真見るたび、フリーダ様が恋しくて泣いてしまう(私が)。対してアンジェリコの方はしんたがはっきりした男顔なので、あの姿でもあまり中性的にならないっていうバランスの良さ。月のアンジェリコちゃんなんて、序盤幼いのもあってぱっと見お姫様なのに、女の子みたいで可愛いな~とならない。全人類屈服させちゃうしな。ゲルハルトがほんと性未分化って印象だったから(あれはあれでりょんくんがすごい)、そことの差も良かった。

  • ジョルモロの話

月の屈服シーンが最高の仕上がりだったのと、このタイミングで投下されたアンジェリコを待ちながらのおかげで株価急上昇の二人ですけども。アンジェリコ様のエベレスト級のプライドにより修練室で追い詰められるまでは本当に二人に対してイニシアチブ使ってなかっただろうし、左右違う手袋しちゃうくらいには、三人はちゃんとお友達だったと思うんだけど。思いたいんだけど。階級にとらわれるな、自らの意思で屈服しろとあの迫力で迫ってきたアンジェリコ様が、繭期拗らせて(繭期じゃなくてもあの流れでは気も狂うでしょうけど…)人間狩り宣言とかしちゃうのを、二人はどういう気持ちで見ていたんだろう。それでも最後の最後までアンジェリコについてきてくれるんだけどさ。
どうでもいいけど、月の上級トリオがもう少し年少で星時点でもまだクランにいてくれたら、アンジェリコフィーバーのガヤ入れモブを全力でやってくれそうだなというのを、今急に思いついた。(NU版のしょま航平ちゃんじんの暴れっぷりを思い出しながら)

  • 萬里の話

元々TRUMPの推しキャラは萬里なんですけど、今年の萬里さん今までより大人げなくて、その分まっすぐソフィのこと想っててすーーごい好きだった。最初ソフィ萬里に寄せてんのかなと思ったけど、ウルから見たらずっとああいうやつだったのかもしれんなと思うと面白い。子ども相手に本気で煽りにいく大人…w。ゆうやくんの実年齢が繭期勢より下なので、ぱっと見も若くて華やかで好きだったなー。ヘアスタイルと衣装も可愛いし。永遠の美少女のみつソフィと並ぶと、華奢で強いコンビなのが、さすがあの超気の強いハリエットの弟と息子という感じで良い(笑)。東京楽の「死ぬなソフィ!生きてくれ!」が好きすぎた話はTRUMP20周年くらいまでしていきたい。本当に良かったあれ。
そういえば踊らないゆうやくんを初めて見たので、そういう意味での新鮮さもあったな。殺陣出来るし、ストプレでもかっこいですねぇ。好みの顔ではないんだけど、なんかすごい好きなんだよね、ゆうやくん。みずみずしくて(笑)

  • ウルの物語

星ひとつ、単純にもうひとつのTRUMPとしても面白いんだけど。NU版が育ての親であるおたくとしては、あのちゃんじん以外は誰も繭期に戻ってきてくれなそうな、誰一人のちのシリーズ作品に繋がらなそうなNU版のあれこれが、物語としてちゃんと取り込まれて繋がって今年のサンシャイン劇場に存在してたのが嬉しかったんだよな。これは完全に感覚的な話なので、この台詞が増えてるからとか、ソフィとラファエロの関係性の話だとかそういうのとは関係なく。当たり前だけど全部繋がってるんだよね。
マリゴでファルス寄りの三津谷ソフィが現れたこともそうで、1つ作品が増えるたび、1つ周知の設定が増えるたび、それを取り込みながら人物像の厚みが増してくのが見事。すえみつさんの伏線回収力はTRUMP初見時からずっと大好きだけど、TRUMPの前後の話ってほぼ後付けなわけで、それを定期的に組み込みながら回収しながら巨大化していってるの本当に面白い。完全オリジナル作品がこんな育ち方するの、なかなか見れないじゃない。小劇場で生まれた作品が、今や地方ライビュまでやってるなんて。

ウルの視点で語られるTRUMP。本編のほうは4500年後のソフィが少女に語る物語だから、なんだかんだで楽しかったクランでの青春パートが強めなのに対して、終始重めの展開の中にふっとソフィとの微笑ましいやり取りが挟まれるのが切ない。加えて前後に、ウル本人すら知らぬ誕生時と死後のエピソードまで入ってくるんだから怖い。あれがあると無いとで全然違うし、あの染様の顔をしたダリちゃんを憎み切れないが故の感情の揺さぶられ方が強烈。ダリちゃんが息子たちを愛してたのは息子たち自身以外はみんな知ってるけど、でもやっぱりダリちゃんも諸悪の根源の中の一人なんだよ。発端はバルラハでもダミアンでもマルコでもあるけど、少なくともラファエロがあんな終わり方をしてしまったのはダリちゃんのせいじゃん…(というのが、月が同時に存在したせいで余計強調されるんですよね。鬼か?)
そう、ダリちゃんのせいなんだけど、染様があまりにも美しくてキュートで色っぽいのと、グランギニョルでの流れを知ってしまっているのとでうっかりダリちゃんに気持ちが寄ってしまうのがずるいよな!w情に流されずに心の底からダリを憎みたいときはNU版を観よう。諸悪の根源がデリコ秘伝の技を伝授してるのが観れるから。(はじ繭に組み込まれないしキャストも別界隈だから新規参入してきた人たちには後回しにされがちだけど、あそこにはすえみつの顔をしたダリがいることをもっと大声で触れ回った方がいい気がするw)

  • ぼくたちのクラン

もう何周目なのかわからない文字通り永遠の繭期を生きるみっちゃんが、終演後にあげた写真のタグが「ここから一人旅」だったの天才だった。みつソフィの一人旅長そうだな~。もともとTウルだった三津谷が、輪廻が発生しない星ひとつを通って本当に「君」になって、可愛い女の子をたくさん集めて実の父が夢見た「永遠に枯れない花」を作って、偽物のウルを自分で生み出しながら長い時を生きていくの、あまりにも壮大な大河ドラマじゃん。10年間の色んなソフィとウルが集約されて三津谷の身体で唯一の「ソフィ」が生み出されていく過程を見ているような、そのちょっと不気味な感じも好きだったりする。「ぼくたちのクラン」とソフィの物語をここまで繋げてきた器としてのソフィ。ちゃんじんクラウスはずっとちゃんじんクラウスだなという印象なんだけど(山浦クラウスとは完全に別物)。
次作、宣言通りニコの物語になるのだとしたら、次はちゃんじんがその役割を担うターンに入るのか、それともまた別のクラウスに出会うことになるのか。次はどんな形の絶望なのか、いつかこの物語の終わりが観れるのか(見せてくれないと困るけど)、楽しみに生きていこう。

なつのお題箱