風の果て

恋をしただけ それだけのことを

ポリトゥスの蟲 7/3ソワレ@全労済ホールスペースゼロ

クロジは観たことないけど末原さんが脚本なら面白いだろうというのと、鎌苅くんのキャストビジュアルが超可愛かったので気になっていた作品。鎌苅くんの日がいいなぁと思いながら日程表とにらめっこしていたんですが、ちょうど初日に仕事早く終われたので、当日券で見てきました。

面白かった。とても。初日ってどんなにいい作品でもちょっとまだ波に乗り切れない部分を感じることがよくあるけど(それが初日に入る面白さでもある)、カテコで「初日でこれ…???」と思ったくらいには熱量の馴染みがよかった。客席に鼻をすする音が広がるのを聴きながら、このままパワーアップしていったら千穐楽にはスぺゼロが丸亀製麺になってしまうのでは…なんて考えてしまったけど、実際どうだったんだろう(笑)
観に行けてよかったです。今年鎌苅ケンケン見る機会がなぜか多いんだけど、毎回お芝居の上手さと顔の可愛さに唸るわ。


ファンタジーテイストのシンプルな物語だから話は分かりやすいのに展開がなかなかのしんどさなので、途中からなんつー話を書くんだ…と思いながら見てましたが(笑)。ラストはハッピーエンド、ではないけど、ケオとカジテが笑っているラストシーンでよかったな。この先絶対に幸せになってくれ…と願うと同時に、そもそも「この先」なんて存在してるのかこれ?という感じで切なかったなぁ。いや、どこでどんな形でもいいから幸せだと思っていてほしい。
みんな上手いし衣装も可愛いし、登場人物みんな愛おしくなるキャラクターなのがずるかった。悪者がいないから、全員愛せるから結局全員辛いんだよなぁ。ノクスとキュリオ(イキウメ「太陽」)とか、No.6と西ブロック(あさのあつこ「No.6」)とか、要はああいう勝者と弱者、聖都市とスラムが隣接する世界での幸せの形を問うような話なので、話としても好みだったし、心地いいしんどさだった。好きなんですよね、こういう話。

セットや照明も凝っていて。スペゼロの舞台正面って、左右と上部の壁部分が広くてそこに映像が映せるじゃないですか。アンドレの「ENDorphin」を見たときに、あそこ一面に映像は光が広がる様が綺麗でものすごく好きだったんですが、ポリトゥスも全面に照明が散る場面がいくつかあって好みだった。星幽霊だっけ、なんだっけ…ホタルみたいな光が地下に広がるシーンがあるんですけどね。客席の上まで広がる光に包まれてるような感覚になる。ステージよりも天井眺めちゃうくらい綺麗だった。


兄弟役だった兼崎くんとケンケン。劇中でネタにもなってたくらい体格差あるから、本当に歳の離れた兄弟に見えるし、ケンケンの永遠の少年性が炸裂していた。完全に大人と子供。ビョードロの時も思ったけどケンケンの少年性と末原さんが書くセリフの言葉選びやリズムの相性がやたら良くて、いじらしくて愛おしくてずーーっとにこにこしながら見ていたくなるんだよなぁ。微笑みながら泣いてしまう。
記憶に蓋をして、優しい嘘を流し込んで、そうやって守ってきたケオの純粋すぎるまっすぐな願いはカジテの希望だったのだろうし、それを続けることは単にケオとためというよりも、自分を保つための行為でもあったんだろう。母親を殺した記憶をケオに思い出させないことだけでなく、アリつぶし以外に生きる術を知らない中で、それを続けていくための嘘。ケオの性格的にも、インチキたちに出会ってあっという間に仲良くなって新しい未来への道を見つけ出していく様を見ても、別にあの兄弟は世界でふたりぼっちなんかじゃなかったし、ちょっと外に目を向ければ隣にいるお互い以外にも手を取ってくれる人はいたんじゃないかなって思うけど、そうさせなかったのはそれがカジテの精一杯の自己防衛だったからじゃなかろうか。
…ということをずっと考えながら見ていた。ケオ、絶対カジテのこと幸せにしてやってほしい。(サロとカジテの絶対お互い好きなのにどうにもならないもどかしさも、お前らどっちかがもう少し早く一歩踏み出してれば…!!なんだけどw、ギリ間に合ったからいいのかな。)(超よかったなサロの最期のシーンの兼崎くん。)

博士とキュドロス。300年生き続けてる、泉の仕組みの創造主とそれに仕える機械人形。たくまがあの位置にいるの、雑に括ったらTRUMPですえみつがダリちゃんやったみたいなメタキャスティングなので、物語が酷になればなるほど、どれだけキャラクターとして苦しんでてもそもそも諸悪の根源(広義)はお前だからな!?という気持ちになるんですがw、そこも含めてあの役を書いた本人が演じてるの面白かったな。壊れかけの機械人形キュドロス、ビジュアルがとても可愛かった。「壊れていく」のがあれは博士の意志による操作なのか、キュドロス自体の変異なのかわからないけど、「壊れていく」と「育っていく」がほぼ同義である機械人形が、世界のゆがんだ均衡を破壊するキーになるの楽しかったな。おたくはだいたいそういう話が好き(主語を巨大化するな)。


ゲオルガの弱さもインチキたちの生きる強さも、彼らとコーダが結びついていく様もとても好きだったけど、もうそろそろ家を出なければならないのでタイムアップ。
ちょーーーよかったので、日程があればクロジまた見に行きたい。あと私は早くハムレットのチケをどうにかしてください(手持ちゼロ)。

なつのお題箱