風の果て

恋をしただけ それだけのことを

少年社中「天守物語」8/11ソワレ@紀伊國屋ホール

なんだかんだで新幕末のない夏は寂しいなぁ、などと思っていたところで、社中を観に久しぶりの紀伊國屋ホール紀伊國屋はばーちゃんち感覚なのでお盆時期に行くのは正しいですね(?)

超~~~~面白かった!
なんだろう、シンプルに面白かった。それなりに抉ってくる重い話ではあるんだけど、話込み入ってないし2時間弱で駆け抜けるのでお芝居として見やすい。
天守物語は原作ミリ知らだったのであらすじだけざっと予習していったんですが、その程度で大丈夫でした。登場人物がそれなりにいるので、名前をなじませておく意味であらすじ知ってた方が楽かも。


人間と妖怪の種族間争いと、そこを超えた恋の物語。
どっちもどっちで悪いところがたくさんあって、でもその行動にもそれなりに理由があって。明確に正義と悪が分かれていないので、明確に幸せになれる人もいない。だけど、全員が自分と大切な人のために必死で生きている物語。社中って強引にでもハッピーエンドに持っていく印象があったのでちょっと意外だった。途中で、「あぁこれ震災後の話か」と思ったら、初演が2011年なんだね。
劇中で妖怪たちは、「人間は弱い生き物だが自分たちは人間を殺すことができない。自分たちが人間を守っているのに。」と嘆いたり憤ったりするわけだけど、ラストシーンで富姫と図書之介が見た未来の光景では妖が滅びていて、それでも人間たちは苦しみながらも生き続けている。容赦ないなぁ。容赦ないけど、人間ってきっとそうなんだ。よくも悪くも、自分たちが思っている以上に図太いし、思っている以上に生にしがみついて生きている。希望の話なのかもしれない。地獄の中の希望だけど。

リアルタイムの感覚で上演されていたであろう初演に対して、今はすでにちょっと懐かしような、「あの時期こういう話たくさん作られてたな」っていうちょっと前の記憶になりつつあって、例えばこれを更に8年後に上演したらまた全然違う感覚で見ることになるのかもしれないなぁなんて考えた。

  • キャスト陣の話

事前に公式アカウントなどでも言われていた通り、今回女性キャストが多くて凄く華やか!二人の姫様はもちろん、侍女チームがすっごい可愛い。さとこちゃんが普通に役者として参加してるの初めて見たけど、社中メイク似合ってて可愛かった。極楽鳥のありさちゃんもめっちゃ可愛かった。声も可愛い。もっと鷹と対になるのかなと期待していたら、どちらかというと桃六に近いくらいの俯瞰の位置だったので、欲を言うならもうちょっと掘り下げてみたかった。
あと亀姫様の、いかにも妹ポジっぽい強気で自分の感情に正直なキャラクターが好きだった。絵に描いたような妹キャラが好きです。自分が長女なので。(さっき明確な悪役はいないって書いたけど、少なくとも元凶はこの人だったなw)

男性陣では琢郎の白痴サイコっぷりが怖くて、凄いな誰だろうこの人、と思っていたら太郎さんだったw見てるとき全然気づかずに見てたわ。びっくり。

  • 鷹(納谷くん)

ちょーーーーーーー好きだった。見たかった納谷健が全部乗せでまるごと提供されたのでびっくりした。キャスパレ(という位置づけでいいのかな、あれは)冒頭のソロが最高なので、DVD販促用とかであそこだけでも動画で公開してもらえないか。鷹ってどう表現するんだろうと思っていたら、納谷くんが動けすぎるので普通に鷹だった。鷹の動きしてた。ダンスの上手さはよくわからないけど、凄い好きな踊り方する子なので、あの常に舞うように飛ぶように動く鷹を見ているの超楽しかった。あとすごくイケボの鷹でしたね(笑)
ちっちゃくて動けるから少年とか幼めの役振られがちだけど、ちゃんと男っぽい役の方が似合うと思うんだよなー。今回恋の描写もあったから(しかも相手が富姫)、ほんとにね、楽しかったですね…。今作の不憫オブ不憫みたいな役どころなので、来世で幸せになってほしい。愛した女に心変わりされて、相手の男殺したらそいつの息子が飼ってる鷹になってしまって、最終的にその息子をかつて愛した女の元まで手引きして富姫守り抜いて死んでいくの、誰よりも一途で誰よりも報われていなかった。そこからラストの「生きたい」に繋がるの、つらすぎるわ。
納谷くん、いつどこで見ても上手いし、若手中心の作品じゃなくてもっとゴリッゴリの演劇お化けみたいな人たちの中に放り込んでいった方がいい気がするので、2.5界隈で見れる期間もうそんなに残ってないんだろうなー。先が楽しみ。(そもそもぱっち、そこまで2.5に特化してないしね)

  • 死宝丸(しょーごくん)

瀕死のしょーごすずきは絶品。それに尽きる。
今回ほぼ瀕死か回想シーンのショタ芝居なので、ひたすら「あ、ありがとうございますー美味しいですーー」ってもぐもぐしていたらクライマックス付近までたどり着いてしまった感じある。瀕死の死宝丸VS死に際の鷹という良い死に芸対決が観れる天守物語(どっちもマジで死にそうなので見応えがあるw)
死宝丸、ちょっとおバカでまっすぐだった故に巻き込まれてしまった気の毒な子…なんだけど、結果的にほぼほぼ死宝丸が殺してたな。めっちゃ強かったなw。美しき狂気。

  • 桃六(むーさん)

キャスパレで納谷さんロックオン状態で端の方にいるのを追っていて、ハッと気が付いたら恐ろしく顔が綺麗な男がセンターに登場していたので、「情報量が多いわ!!!」と叫びたくなった。忙しい。
最初人間のテイだったので、いやその顔で人間ですと言われましても???と脳内で突っ込みまくっていたら、創造主的な立ち位置だった。人間にも妖にも鳥にも属さない異質な存在としてめちゃくちゃ説得力がある(顔に)。クライマックス、メインのお二人の熱演も良かったんですけど、いかんせんむーの顔が綺麗すぎて思考8割「美!!!!」に占拠されるのが難w。顔の大半髪で隠れているのに、その長い髪の奥から覗く目が美しすぎて、破壊力凄いんだよな。なんなら多分むーさんもあそこすごい良いお芝居してるんだけど、顔が良すぎてあんまり入ってこない。いや、上手いんですよ。むーのお芝居大好きなんですよ。でもそれを遥か上回って顔がいいんだわこの人。そりゃ本人も顔がコンプレックスになるわと変なとこで感心したw


余力があったらもう1回観て、それこそラストの桃六のとことか、もうちょっとちゃんと見たかったかも。

なつのお題箱