風の果て

恋をしただけ それだけのことを

舞台「ダブル」4/1マチネ@紀伊國屋ホール

舞台「ダブル」開幕おめでとうございます!!!!

というわけで、初日に入ってきました。朝起きれないからマチネを忌み嫌っている私が、「ダブルを見たらダブルにことしか考えられないから」という理由で、マチネ前に映画刀剣乱舞を済ませるべく土曜の朝9時の映画館に座っていた、というところから、私のこの舞台に対する意気込みを感じてほしい。
ちなみに映画はとても楽しかったのでこの話は別途します。入場者特典が長谷部だったので、長谷部をカバンに入れたまま紀伊國屋ホールに行く羽目になったりしました。


で、舞台の感想を書くんですけど、ちょっとその前に。
この舞台化が発表された時、まず議題に上がったのが「ダブルのどこをやるのか」だった。原作を読んでいる人はご存知の通り、あの話は現在進行形で「紀伊國屋ホールで初級革命講座を上演する」に向かって動いている。が、そこに至るまでに単行本2巻分、多家良が映像に挑戦したりそこで売れたり折れたり、そこからまた這い上がったり云々……があって、ようやく「初級」の登場となる。舞台で2時間で丁寧にやるんだとしたら、いっそ初級前の多家良が役者として再生するところまでで切ったほうが切りがいいような感じさえある。

が、しかし。

ダブルはそもそも「初級革命講座」に準えながら多家良と友仁の「ダブル」の関係性を描いていくというクレイジーな作品なので、メディアミクスするなら初級編まで突入しないと意味がない(これはWOWOWドラマの時もかなり無理矢理頑張った感あった)。しかも今回、場所は紀伊國屋ホール。「紀伊國屋ホールでダブルで中屋敷だぞ!?満貫あるだろ!!(cv任意の木村伝兵衛)」と叫ばざるを得ない。
まぁ何が言いたいかというと、「こいつら、マジで多家良と友仁による初級革命講座をやる気なのでは……!?」ってこと。え、どうしよう、友仁さんの、つまりはれおさんの初級冒頭の山崎の長台詞が見れちゃったり……するんじゃなぁい???

結果、予想は半分当たっていた。残りの半分は、予想を超えていた。外れたんじゃない、合ってたけど超えていた。
面白かったです。これが「漫画ダブルの舞台化」としてどう評価されるのかはわからない。私はハナから初級を見るつもりで客席に座ってしまった客だから。そして実際、目の前で展開されたものは「初級革命講座をベースに敷いた演劇漫画ダブルを使って上演する初級革命講座」という色んな意味で狂った2時間20分だった。ものすごいパワータイプの狂気の掛け合わせを見てしまった。


前置きが非常に長くなりましたが、以下、「初級革命講座をベースに敷いた演劇漫画ダブルを使って上演する初級革命講座」の感想を長々と書いていこうと思います。
なお、初級革命講座はおそらく今後も絶対に映像化も配信もされない作品なのですが、本作はあくまでも「漫画ダブルの舞台化」なので、千秋楽配信があります(トンチか?)。劇場で見た方が絶対面白いタイプのものではあるのですが、劇場で見られない方もぜひ、玉置玲央演じる鴨島友仁の初級革命講座(の欠片)を目撃してください。よろしくお願いします。

eplus.jp


で、ここからやっと感想なんだけどさぁwwwwあのね、前提を合わせてからじゃないと書けないのよ、マジで。だって私はもうあれを「中屋敷がダブルを使って初級をやっとるな……」という目でしか見れないし、実際あのロビーのはしゃぎぶりを見るに、本当にその気でやってんのよこの人たちはwwwww始まる前から大はしゃぎしちゃったもんね、ロビー最高すぎて。夢見たいな光景になってた。

ひとりきりロビーではしゃいで、いつもの友人と並んでいつもと同じ椅子に座り、いつもと同じ緞帳を眺める。こうしていると、何を見に来ているかわからなくなってくるなぁ……なんて思い始めた時。

いつもと同じ白鳥の湖が流れた

いや、何見に来たんだっけ!!!?????


え、これどうなるの。幕が上がったらドライアイスの煙が流れてきて、万が一まさなりがあのポーズ(あのポーズ)で立っていたらどうしよう……???そんな混乱の中、いつもの数倍の長さに感じられる時間(実際には通常の熱海と同じ尺)が過ぎ去った後、そこに現れたのは、ごく普通のロフト付きワンルームマンションと、引っ越し作業をする多家良と友仁の姿だった。

  • 全体の話

物語は、全てこのマンションに登場人物が出入りする形で進む。いわゆる、ワンシチュエーションもの。この辺もつか作品を踏襲しているのかなと思うけど、着替えるシーンでは本当に着替えるし、舞台作品としてはちょっと珍しいくらい「飲食」に本物が用いられていたのが印象的だった。
2時間20分、舞台は決して「漫画ダブル」の筋書き通りではなく、再構築されたストーリーとして進む。これは個人的にかなり好みだったな。2.5でもこういう「舞台ならでは」の表現をしてくれた方が好きなのだけど、ダブルに関しては2.5というわけでもなく、ダブルを使って「演劇」をやろうという強い意思とこだわりが全編通して感じられたのが面白かった。

そんな中で、なぜか突然ちょくちょく降りてきて映像を映し出す紗幕。あれなんだったんだ……というのだけまだ腑に落ちていないのだけど。突然役者の顔がドアップで映し出され、映像だけで丸々ワンシーンが進む雪山の芝居のシーン。身内の間では「マンションの外での出来事だから」「多家良の心象風景だから」「まさなりのボーナスタイム」など様々な見解が出ているけれど、まだ私の中でこれ!という答えは出ていない。千穐楽見たらまた何か変わるかな。
ただ、好きだったのはLINEのやりとりが映像で出てくるところ。最近色んな舞台でLINEやSNSを映像で映す演出に出会うのだけど、だいたい、ダサい。今回もきっちり、ダサい。ただ、多家良に対する友仁さんの返信が、ごくごくシンプルな一語文、二語分で構成されているところに、友仁さんを感じられてそれが好きだった。LINEは吹き出しで細かく文章を区切れるので、つらつらと等間隔で文字が並ぶ台本に比べると多家良にも読みやすいのではないかと推測するんだけど、それでもさらに短文で展開していくの、すごく友仁さんだなぁって。対比するように、愛姫ちゃんはそこそこの長文を一気に打つんだよね。

あと初級革命講座のタイトルロゴバーン!!!!は最高だったよね!!!!あの瞬間の高揚感、なかなか得られるもんじゃない。私が原作者だったらもう成仏してしまうと思って、野田彩子が紀伊國屋ホールのロビーに骨を産めないか心配しちゃったけど、どうにか最後まで描いて私たちに「漫画ダブルの初級の本番」を見せてほしい。
しかしあのラストシーン、原作がそこまでなのでそこで終わるのは誠実な作りだなと思ったけれど、それにしたってあの「感情が爆発した後でちょっと冷静になって、とりあえず飯食うか……」で何も解決しないまま場が動いていく感じ、妙にリアルなアラサーの恋愛でそわっっっっとしちゃったな…(笑)

  • 多家良(和田雅成)

今回唯一にして最大の懸念点だったこのキャスティング。初日を終えての正直な感想は「他に言いたいことがありすぎてまさなりに言及している余裕がない」だった。これはこれで物凄い悪口である。
いや、でもさぁ!w見終わって、ロビーで集まった我々が口々に「大石くん…!」っていってた時点でマジでまさなりの話してる余裕ないんよw(この件は後述)
でもまぁ、当たり前に芝居は普通にできるし、見栄えもいい。滑舌も問題ない。なので、まぁ、強いて特筆するなら「失声症のくだりで声を奪われたまさなり、めっちゃ顔のかわいさが引き立つな…」ということくらいだろうか。まさなりってやかましい関西人の印象が先行しちゃってあんまり容姿に気を取られたことがなかったんだけど、声を失うくらい弱体化したまさなりは可愛げがあってよかった。最初キャスティング発表された時「まさなりは下北沢の道端に落ちてても拾わないじゃん!!(自力で生きれそうなので)」と思ったけど、あのシーンの多家良はちゃんと庇護欲をそそる顔してて良かった。

あと今回友仁役にれおさんがきていることで「天才宝田多家良を演じられる役者なんているのか」問題よりも、「玉置玲央の友仁と相対する多家良をやれる役者なんているのか」というハードルの方が遥かに高くなってしまったため、そういう意味でも今までれおさんと関わりのなかったまさなりが配置されているのは良かったのかもしれないなと思った。まともにタイマン張らせようとしたら、それこそ敬三さんになっちゃうし、それは柿でやれって話になっちゃうし……w

  • 友仁(玉置玲央)

キャスティング自体が既にオタクの共同幻想みたいなものなので、もう非の打ち所がなく友仁さん。「友仁がやりそうな、下手じゃないけどいかにも売れなさそうな絶妙なラインの芝居」がやたらリアルなところまで含めてめちゃくちゃ上手い。ただ、舞台上で最強の天才役者がこっちになっちゃってるんだけど、それはもうしょうがない。しょうがないよ!れおさんに来られたらそれはそう!!!!笑
今回、友仁を初級の台詞を喋るシーンが大きく二ヶ所あり。一度目の、初級の台本を見せてもらって多家良と試しに演じてみるシーンはまさに「下手じゃないけどいかにも以下略」な友仁さんだなぁと思った。二度目は初級の冒頭、山崎の独白シーン。こっちは山崎の台詞を通して中の人の感情が漏れ出してくるので一度目とは少し違った語りになるのだけど、あの長い長い独白の中のほんの一部として発せられる「あなた!」があまりにも“それ”だったので震えちゃったな。

しっかし個人的にはこのシーン演じるれおさんのためにチケ代払ったようなところあるので、初級(本物)の冒頭のBGM流れた時から祈るような気持ちで舞台見つめてしまったわ。こういうものにぶつかる時があるから、おたくは客席に座り続けるのだ。

あとは序盤からずっと、多家良に対するこう……様々な巨大なものが全身から滲み出ていて怖かった。触れる指先で、視線で、全部伝わってしまう。それなのに多家良には全然それが伝わっていないのが、舞台版ダブルの二人の形で、だからこそ、山場のキスシーン前後の感情のやり取りは漫画とは少し違ったものになっていたように思う(「山崎と熊田」であろうとしていたふたりが、あそこで「山崎と小夜子」になるという構図は同じなのだけど)

  • 九十九(井澤勇貴)

今回のMVP。芝居がうまいのも顔がいいのももちろんだが、舞台裏でもめちゃくちゃ働いてくれてありがとう井澤。
私はそもそも「子役時代からの古参九十九推し」という半メタな人格で客席に座っていたので(?)、初登場時、ほぼ井澤勇貴そのまんまみたいな出立ちで九十九さんが出てきた時点でもうキャッキャしていたのだけど。

九十九推しの人格で舞台観てたら、推しが大石くんの2.5次元版を始めると思わないじゃん?????

何を言っているのかわからないひとが大半だと思うので出来る限りの説明をしておくと。
劇中で九十九がやっている「前説ショー」は、少なくとも私が観た2015年版および2022年版の初級では、山崎役でも熊田役でもない役者が担っている。劇中台詞でも「誰が喋ってたのかわからない」なんて言われているけど、実際あれ、誰でもいいのだ。結果的に山崎になれなかった九十九が唯一演じてみせるシーンが「ぶっちゃけ山崎じゃなくてもいい」あの部分なの、よかったなぁ。ああいうところも、初級の被せ方が本当に上手い。

で、それはいいんだけどさ。
井澤の再現度が高すぎる。おそらく資料として直近の公演の記録映像を見たのだと思うんだけど、あまりにも、あまりにも2022年版の前説の大石くんなのよ。恐るべし2.5次元俳優の再現力。いや、そこ全然再現する必要ないし、絶対客席で一桁の人間しか喜んでないんだけどさwwwwでも少なくとも私たちはめちゃくちゃ楽しんだので、ありがとう井澤。おまえは最高の役者だし最高のエンターテイナーだったよ。スタァさんなのでタクシーで帰るとこも最高だったよ。

ついでに言うと、そのあとヘルメットとヤッケで出てきてちょっと喋ったまさなりがすげぇ下手だったので、やっぱつか作品やるべき役者じゃないんだよな!!!!!とは思いましたが、別にまさなりの役者人生の中でつか作品をやれる人間になる必要全然ないと思うので、それは置いておく。(でもあそこでいきなりド下手になるのちょっとおもろかったよ)



他にもまだまだ書きたいことはたくさんあるのだけど、この時点で5000字越えなので、あとは千穐楽後にまた改めて。
女性陣も最高だったし、漫画と舞台の世界をつなぐ役割を担ってくれた敬三さんも最高だったよーーー。

なつのお題箱