風の果て

恋をしただけ それだけのことを

B&M「墓場、女子高生」7/25マチネ@シアターイースト

なんでこんなに面白くて笑って泣けてあったかいんだろうなぁ、ここの作品は。本質は重い話なんだけど軽やかで、刺さるんだけど爽快で、つらいんだけど最後はどっか明るい気持ちで終われて、ばかみたいに泣ける。だから好き。押しつけがましくないんだよね。

以下、感想。戯曲買ってないから台詞は曖昧。



授業中の学校脇の墓場。さぼって歌って騒いで酒飲んでバカみたいなゲームして。何をするにもテンション高くて声でかくて、物凄いエネルギー使って生きてる高校生。制服に守られて、学校という小さな箱庭の中で、今だけの楽しくてしんどくて死にたいような毎日を全力で走る3年間。大声で叫ぶくらいの勢いがないと駆け抜けきれないような時間。
「許します♪」ってプリーツスカート広げてポーズ決めるだけで、だいたいのことはどうにかなるお年頃。白いセーラーが眩しい高校生の夏。最初の回想シーンで、暗転が明けたら生前の日野ちゃんを含めた女子高生たちが、全員夏服でだるまさんが転んだしてた瞬間に、もう泣きそうになった。戻りたいわけじゃないし、戻る気力もないけど、高校生は眩しくて美しいね。


日野ちゃんを演じる清水さんの存在感がすごかった。ちょっと機械音の入った特徴的な声で、でも歌声は綺麗で上手で、10代の蒼井優みたいだった。めちゃくちゃ好みのタイプ(笑)

「せっかく死んだのに、なんで生き返らせるの?人一人を自分で殺すって大変なんだよ?痛いし苦しいし、知らないでしょ!?」
「私勝手に死んだんです。勝手に責任感じないでください。」
「みんなも先生と同じなの。みんな私が死んだ理由になんかなれないんだよ。私たち確かに毎日一緒にいたけれど、みんなのせいで死ななきゃならないほど、仲良くはなかったよ」

このセリフってたぶん凄く納得できる人と、「それはそうかもしれないけど、そんな風に言わないでよ」って思う人がいて(ちなみに私、前者ね)。きっとあの女子高生たちの中にもすっと受け入れられる子とそうでない子がいて、最初にごめんって言ったビンゼは受け入れられるタイプだったんだろうなと思った。ビンゼは日野のためじゃなくて自分が気持ちの整理をつけるために儀式に参加するって最初から明言してたから、日野ちゃんの主張も受け入れたし認められたのかなぁ。
なんとなく言っちゃいけない空気あるから実際口にする人はそうそういないだろうけど、日野ちゃんが言うことはごもっともだ。特に日野ちゃんみたいに独特の自分の世界で生きてる子ならなおさら。私はそういう日野ちゃんが凄く好きだった。じゃあ死んでいいのかとか、そういう問題じゃなく。(そういえばこれ自殺した女子高生と残された友達の物語なのに、自殺の是非とか論じられてなくて、そういうとこも好きだったな)

「にっしーがお気づきの通り、世の中はどうやら腐っているというではないか。だから、腐った世の中を美しく定義しなおす力も必要だと思うんだ」
「私が死んだ理由をつけて。本当は醜くて哀しい理由を、美しい理由に変えて」

結局最後まで日野ちゃんが死んだ理由はわからなかったけど、泣きながら美しい理由を考える友達を、泣きながら笑顔で讃える日野ちゃんは本当に綺麗で悲しかった。残された人に勝手に責任感じられるのも嫌だったし、自分がそんな醜くて哀し理由で死んでいくのも嫌だったのかな。日野ちゃんは、自分がもう1度あの桜の木にぶら下がるための美しい理由がほしかったのかもしれない。だってもう1回死ぬ以外の道もなかったのだろうし。
朝、日野ちゃんがもう一度桜の木にぶら下がっている場面は壮絶だったけど。動けないみんなに、「怖いなら歌え!」って叫んだのは誰だったんだろう。やっと死んだのにまた死ななきゃいけなかった日野ちゃんもかわいそうだし、ある日突然いなくなった友達が、また目の前で死んでいたみんなもかわいそうだ。なんつーつらい展開なんだって思ったけど、幸せな結末になんていくわけなかったんだよね、だって日野ちゃんは幕が開いたときからもうずっと死んでるんだから。


チョロが、「ピノみたいになりたくないって、私たちの死にたい理由がひとつ減った」って答えたのが凄く好きだった。死にたくない理由が増えるのでも生きたい理由が増えるのでもなく、死にたい理由が一つ減ったんだ。誰かの死ぬ理由にも生きる理由のもなれなくて、でも死にたい理由が一つ減ったんだ。こういう表現になるのが、福原さん脚本の一番好きなところかもしれない。
同じ感じで、最後にビンゼが「フジモリが急にいなくなってもいいように、今言っておくね。日野ちゃんには言えなかったから、先に言っておくね。」って叫んだ言葉が「ありがとう」でも「大好き」でもなく、「さよーならー!」だったのも好きだった。もう泣きつくしたのに、最後の最後でまた泣いた。誰も幸せになれてないはずなんだけど、不幸のドン底にもならない不思議な感覚で、見終わったあとしばらくふわふわしてた。


あ、余談。

「私、ほかに一緒にいる人がいないから仕方なくあなたと一緒にいるんだけど、あなたも同じ?」
「そうです、ほかに一緒にいる人がいないから、仕方なく部長と一緒にいます」
「よかった、じゃあ私たちお互い様ね。」

っていう武田様と西川さんの酷い会話wが妙にリアルで好きだった。そんな友情の方が以外と長く続いちゃったりするよね、とか。だってやむを得ない状態からスタートしてるから(笑)