風の果て

恋をしただけ それだけのことを

月髑髏終演に寄せて<上弦の月編>

美しい!まっっっこと美しい!!

若くて美しい男は国の宝だ。「顔がいい」という尊き長所は、何故か日本の芸能文化では歌やダンスや芝居の才能に比べて軽視される傾向にあるのだけど、顔面こそがこの世に生まれたときに神から贈られた最高の才能であり、若さこそ人生のほんの一瞬しか持ちえない無二の宝だ。
そして若手イケメン俳優を侮るなかれ。推されにも干されにも理由がある。ぱっと見どんなに理不尽に見えても、理由のない干されなどいないし、どんなに意外な人選であっても理由のない推されはいない。選ばれる子は選ばれるだけのものを持っているのだ。

…というのを福士くんは気持ちいいくらいに全身で証明してくれた。

凄い…凄かった上弦。こんなに興奮する舞台久しぶりに出会った。若くてエネルギッシュで無鉄砲で、3か月という長い上演期間とは思えないくらい、「今しかない」刹那のきらめきに溢れてた。そのくせそこに建ったのは色も形も全然綺麗じゃない、混沌としたぐっちゃぐちゃの髑髏城だった。こんなに眩しくて愛おしくてめちゃくちゃな髑髏城に出会ってしまったら、こんなものを愛してしまったら、上弦の月が登らなくなったこの先、何を好きになったらいいか困るじゃない。どうしてくれるんだ。



まさに超ワカドクロだった上弦チーム。メイン5人が全員20代男性という、足りないものは全部勢いと吸収力でカバーしてくるような力業の座組で面白かった。いや、若いといいつつ芸歴20年選手が2人紛れ込んでるし、髑髏3周目のプロまでいるから、よく考えると総経験値はそんなに低くないんだけど。
もっと器用にわかりやすくキラッキラの髑髏城を誕生させるかと思いきや、恐ろしく拗れたものを作っては壊し作っては壊しするわ、慣れてきたらきたでやんちゃすぎるアドリブ(と呼んでいいのかあれはw)が始まるわ、カテコで脈絡のない跳び蹴りをかます人はいるわ、次々熱愛報道出るわ、いろんな意味でとんだ問題児チームだった(笑)誇張抜きで、登城するたびに違う形の城が建ってた。熊木衆もびっくりの、カラクリだらけの髑髏城。楽しかったねぇ。バカみたいに楽しかった。あの衝撃の前楽の帰り道の楽しさ、絶対忘れない。

福士くん強烈だったなー。あんな頑丈な子だと思わなかったし、あんな自由な子だとも思ってなかった(笑)人間の子が人外の中に放り込まれたら、意外とすんなり順応しちゃったみたいな面白さがあった。バケモノの子的なwそしてもう一人の映像班、翔平は不思議なくらいずっと人の子だった。あれだけの演劇モンスターが集う新感線の中で、芝居も殺陣もまったく引けをとらない上にあの美しさなのに、ずっと誰よりも人間らしかった。上弦のエモさやいじらしさは、みうらんが担ってた部分が実は大きいんじゃないかな。あんなにピュアでまっすぐな蘭が見れると思わなかった。そして顔がよかった。あとラジオがめちゃくちゃ面白いという収穫があった(笑)

  • 中合わせの捨霧、鏡合わせの天蘭

上弦はシンメ二組の物語だった。誰かが誰かの対になる、誰も一人ぼっちにならない構図なのに、どこかでとんでもなく拗れてしまって、絶対に上手くいかないもどかしさ。

沙霧OUT霧丸INにより爆誕した捨霧という新概念。上弦の月は若さゆえに浅はかで楽観的な捨之介と、甘えたで泣き虫のきりちゃんが手を取り合って一緒に強くなる物語だった。シンメ、って言葉がしっくりくる二人。近すぎず離れすぎず、お互いのこと全部はわからないけど、必要なときに的確にその手を取れる存在。きっとこの先も一緒に泣いて一緒に強くなるんだろうなと思わせてくれるラストの捨霧が、拗れまくった上弦の中にシンプルだけど真っすぐな光を差し込んでくれていた。若者たちの未来が明るいかどうかなんてわかんないけど、明るい未来を作ることはきっと出来るんだ。

対する天蘭は背中合わせじゃなくて鏡合わせ。正反対のようだけど、手を伸ばしたら必ず相手も手を伸ばしてくれる。
前にツイッタで上弦天蘭はお互いにとってお互いが「最愛の殿が愛したもの」だし、殿においていかれちゃったもの同士としても近い感情を共有できる相手だという話を書いたんだけど。結局この天蘭が求めたものって、天=殿そのものであり、殿と過ごした思い出であり、過去にとらわれたまま身動きできない中で、同じ境遇にいた相手の手を取らざるを得なかったんじゃないかと思ってる。だって寂しそうじゃん、上弦の天も蘭も。8年ずっと埋められない穴を抱えて生きてきた人たち(あとてんまちゃんは天=殿そのものになりたかったから、殿の大事なものであった蘭の入手は必須と思ってそう)
無界襲撃でのシンメっぷりを見てると、このまま二人で最強悪役コンビとして活躍する未来もあったのではないかと思ってしまうんだけどw、何度ループしたっててんまちゃんはきっと蘭を殺しちゃうんだろうなぁ。

  • 捨之介と贋鉄斎おじさん

ベテラン演劇怪獣が捨ちゃんを好き放題おもちゃにするコーナーだった(という認識だよ私はw)贋鉄斎と捨のシーンが、いつの間にか自由奔放な現代っ子捨ちゃんが贋鉄斎おじさんをおもちゃにするコーナーになっていた。おかしい、月が始まったころは福士捨は大事に優しく、「君は日替わりで傷を負う必要なんてないんだよ~」くらいの過保護対応をされてたはずなのに。
すごかった、福士くんじゃなかったら許されなかったようなものたくさん見た気がするwこんな贋鉄斎が振り回される展開有りなのかよwwいやーー若者怖い。
福士くんはここに限らずいろんなところでフリーダムっぷりを発揮しており、こんな大舞台で初主演で、どんだけ図太いんだよ!とつっこまざるをえない光景をあちこちで見た。選ばれし者の強さを感じる(笑)この福士くんあっての上弦だったし、それが許されてしまう座組であったからこその上弦だった。

  • 最年少兵庫の功績

メインキャストのバランサーであり、実は全体の流れを作る役割を誰よりも担っている、みんなのリア恋枠兵庫さん。散らかりまくった上弦の中で、一番安定して安心して見ていられる飛び道具だった須賀先輩。劇中はもちろん、カテコを盛り上げ太一さんをあやし、SNSには見に来た若手俳優の写真を載せてくれ、何から何まで本当にありがとうございまーす!!だった須賀先輩。あわや罰ゲームかというおいしいやらかしまでキめていった須賀先輩。髑髏城に個人ステフォがあったらたぶん行くたびお布施買いしてた。
上弦の猛獣たちの中における兵庫には圧倒的な若さとパワー必要だっただろうし、それでいて最後でプロポーズばちっと決めないと話が締まらないし、あんなの成立させられるの須賀先輩しかいないと思うんですよ。いのうえ歌舞伎で森田剛とタイマン張ってたのを見ているので、なんなら太一さんとタイマン張るようなポジションでもやれたんだろうけど、今回は土台として須賀ちゃんがいてくれて本当によかった。すっっっっごい忙しい中、本当にお疲れ様でした!!これからも太一さんと仲良くしてね!!

  • 無界の里がSWORD地区だった話

上弦の無界の里はとにかく治安が悪い。公演初期はまだザム3が絶賛公開中だったこともあり(そう思うとどんだけ公演期間長いんだよw)、「荒武者隊は鬼邪高でガールズはいちごみるく、無界の里は無名街だな…」などと思っていた。無界の主人どう見てもヤンキー上がりだし、太夫は大阪の肝っ玉オカンだし、あれは血よりも強い絆で結ばれた家族だw
そしてうるさい。最初の関東荒野時点でもううるさいし、無界の里も全体にやかましいし、月見の宴では泥酔してるやつがいたり荒武者隊を調教するガールズが現れたり、なんかもう画面の隅で起きてるような出来事の主張がずっと!激しい!!wwww
そんな無界の里が大好きだった。あのうるさい無界の里見てる時間が、もしかしたら一番「上弦ーーー好きだーーー!!」って気持ちだったかもしれない。

久しぶりに大好きな太一さんを見た気がする。前楽の六欲天ダンスが最高だった話一生したいんですけど。あの圧倒的な華と引力、何があってもこの人がいればきっと何とかなると思わせてくれるカリスマ性。このとんでもない人を全人類に見てほしいのに、たいしてでかくもないホール一つ埋まりきらなくてもどかしい思いをしていたあの頃の私が、連日満員の人種のるつぼステアラに君臨する早乙女天魔王で少し昇華された気がした。
終わりに向かう太一さんはまた格別の美しさだなぁと改めて思った最終週だった。私をエンタメシャブ漬にしたの太一さんだからさ。その太一さんがいる現場で、またこんな楽しくて楽しくて終わりたくないものが見れてよかったよ。大好きなものが、大好きな気持ちのピークのまま爆発するみたいに消えていく興奮としんどさで気が狂いそうな感覚がいっそ心地よかった。


「大好き」と「顔がいい」をどれだけ交互に言い続けても足りなかった上弦の月。期間限定契約社員みたいな髑髏党員でしたが、花鳥風月のラストでこの祭りに乗っかれてよかった!!上下合わせて128公演、お疲れ様でした!!!!