風の果て

恋をしただけ それだけのことを

柿喰う客「滅多滅多」5/23マチネ@本多劇場

アルターの繰り上げ千穐楽に駆け込んで以来、久々の観劇。「舞台観劇」としてはなんと丸1か月開いてしまった。シャブ切れ極まっていたところに「今回の柿めちゃくちゃいい」という評判を耳にして、チケットを取った。
実は柿の本公演を生で見るのも、本多劇場に行くのもこれが初めて。YouTubeに公開されてるものや、若手俳優版はいくつか見てるけど。観劇おたくの端くれを名乗ってるのに本多劇場童貞なのちょっとコンプレックスだったから、こんな最高の作品で本多デビュー出来て嬉しい(笑)ちなみに乱痴気は配信で見ました。

久しぶりに「演劇を浴びた」って感覚だった。運よくれおさんが来ている回で、中に入るなりれおさんが暴れていたのでその時点でもう楽しかった(笑)
先にアフトクの話をすると、この回は大村わたるさんと穂先くんだったんですが、今回は75分という尺が先にあって稽古の中で長台詞とかの余計なとこを削っていくという話をしていたのが興味深かった。「それじゃわかりすぎるって台詞が削られていく」「お客さんに追いつかれちゃいけない。逃げ切れ。お客さんの理解力に追いつかれるな、みたいなことを言われる」と。最高だな。「わかりやすい」ものが流行りがちな今、「わからせない」ことに力を注いで演劇を作ってくれる人たちがいてくれるのは救いだ。小難しい話の方がいいということではなく、全部わかっちゃったらつまんないので、私が。
正確に言うと滅多滅多はそんなわかりにくい話ではなくて、わかるけど「はっきりしない」部分がたくさんあるということなんだけど、その「はっきりさせない」のが大事なんだろうな、あちらにとっても客席の私にとっても。


しかしおたくはよく3時間半の演目を「実質5分」みたいなガバガバの体感表現しますけど、柿は逆に3時間分の情報量を浴びせられたはずなのに、終わって時計を見ると針が75分しか進んでいなくて混乱しますね。まさにノスタルジーと名のついた異空間に引き込まれていたのかもしれない。



本編の話。
小学5年生のコドモと、先生であるオトナと、学校の七不思議。そしてその狭間を駆け回る19歳の真白の物語。倫理観は三階の教室の窓から捨てられた。


「小5」って設定がいいなと思った。私の時代とは学習指導要領が全然違うので自分の時代の朧げな記憶で語るけど、確か小学校の勉強って5年生が一番分量が多くて難易度も高いんだよね。なんなら小5の算数より中1の数学の方がシンプルだったりする。それはつまり、脳が一番物事を吸収しやすい時期で、子供の成長が一気に進むと年齢だということで。子どもなんだけど大人が思ってるほど子どもじゃない、物凄く複雑でしたたかで危うい時期の子どもたち。
そういうのがあの7人の少年少女にぎゅっと詰まってて、それこそずっと「ノスタルジー」だった。変声前の男の子を女性が演じるのはよくあるけど(沖さんの翼くんすーごい美少年だった)、男性が演じてる萌音ちゃんが何故か妙なリアリティを醸し出していて、本当に「いる」女の子なのが凄かった。学年に一人はいる、ああいう子(笑)

オトナ組は、まずいまだ女子高生のイメージが強かったなっちゃんがすっかりえっちなおねえさんになっていて驚いたのと、ひろたかくんがまぁえっちだった。あのビジュアルに和泉の役当ててるの、ほんとダメなのよ(笑)…と思っていたら、乱痴気ではひろたかくんがちょっとどころじゃなくえっちなおねえさんになっていてもっと大変だった。ふくのちゃんのインパクトでしばらく他のこと入ってこなかったwふくのちゃん、キャラクターとしても超好きだったったなぁ。(乱痴気のなっちゃんのるこちゃんは、永田さんとは違う意味で「小5女子」してて良かった。学年の中でもちょっと幼い部類のるこちゃんと、妙に早熟なタイプのるこちゃん。)

七不思議たちは総じて楽しそうだった(笑)ムラサキカガミ、他の七不思議に比べてマイナーじゃない?と思ってたんだけど、オトナとコドモの話を描くにあたってこんな最適な学校の怪談はないわな。
「七つ目」に真白が加わるところはよくわかってない。最後のセリフからして真白=かる馬で、大学生になった彼が「教育実習生」としてノスタルジーの中に飛び込んで、置いてきたままのあの日を追いかける話なんだろうなぁとは、ぼんやり思ってるけれど。最初「七つ目」は校長のこっくりさんなのかな、とか考えてたんだけど、あの校長と真白も何か近い位置にはいるんだろうな。生き残り組。それと、ファーストキス。"ちゃんと"大人になれなかったるこちゃんやふくのちゃんが焦がれたファーストキス。真白にムラサキカガミを忘れさせなかったファーストキス。甘くて苦いマーマレード!(世代)



…とまぁそうやって、ちょっと捏ねてみようかなとか思ったところで、最後の滅多滅多音頭のインパクトで全て吹き飛んでしまうのですけど……。あの光景見たとき、あぁ本当に頭のおかしい人が作ったものを見せられている…って思ったもんな(褒めてる)。乱痴気の歌唱シーンで翼くんの声帯が分離したのも最高でしたね。すげーよ、あんなの思いつくのw

面白かったなー。聞き取れるかどうかぎりぎりの速度で畳みかけられる台詞、繰り返されるフレーズ、行き来する時間軸、客席側もアドレナリンどばどばになりながら駆け抜けるたった75分間。
果ての無い胸糞展開なのに終わった瞬間残るのが爽快感と子供時代へのノスタルジーなのは、それらが相反するものではなくて小学生という時間が多かれ少なかれ「そういうもの」だからなんだろう。


ちなみに配信は6/20まで買えるらしいよ!(宣伝)
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170390


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