風の果て

恋をしただけ それだけのことを

新・熱海殺人事件 ラストスプリング 4/3ソワレ@紀伊國屋ホール

今年も熱海の春が来た。

4日間だけの公演、もう無いと思っていた味方のリターン&2度目のまいちゅんさんという見たことのあるメンツに加え、直前の修羅雪姫が意外といい出来だったため、正直「無理にやる必要なくない?」と思っていた今年の熱海。
蓋を開けたら、とても堅実で、かつ新鮮な熱海殺人事件がそこにあった。これだから紀伊國屋ホールに通うのをやめられないんだ(笑)

去年の11月、熱海をやってみたい俳優を募る中屋敷さんのツイートに一色くんが反応していて。「えー、立派な犯人の一色くんは観たいじゃん!採用!」なんて騒いでいたら、本当に叶ってしまった。結果として、一色くんの大山が投入されたことで、今年の熱海は何倍も色鮮やかなものになっていた。見れてよかった。
(ちなみにこのツイートに関してはちょっとした裏話があるのだけど、それはまた別の機会に・笑)


以下、公演感想。


どうでもいいけど、千穐楽のタイミングで改装中の紀伊國屋書店の2階以降のエスカレーターが開通したのちょっと面白かった。改装終わったのかと思ったら、真新しい空の本棚が並んだだけの完全に「引っ越し中」の光景が広がっていて笑った。ありがとう、エスカレーターだけでも使えるようにしてくれて。助かる。(修羅雪姫のときは4階まで階段で上がらされていた)
あと千穐楽の日って刀ステ綺伝の明治座楽で、現地なり配信なりで世のオタクが盛り上がってるタイミングだったはずなのに、いつメンが全員紀伊國屋にいたの凄い良かったです。みんなそんなにやる気なさそうだったくせにちゃんといるじゃん!律儀か!w


本題に入ろう。

  • いっしきんちゃん登場による化学反応

一色くんの金ちゃん、凄かった。何でもできるし上手いのは知ってたけど、観たことのない大山金太郎を見せてくれた。

踊れる動ける大山、まず登場シーンで圧倒的に華がある。登場シーンの華というとまりおくんがずば抜けていた印象なのだけど、あれとはまた違う、身体表現の大勝利。ポーズの一つ一つが異常にキマる。ついでに言うと劇中「二人のアイランド」のりゅき一色シンメもとんでもなく上手くて贅沢な時間だった。踊れる舞台役者は強い。
あと冗談で「声帯だけ明治座にいる一色くんの本体を見に行く」なんて言ってたら、本当に喉が死んでいて笑ってしまったけど、あんな枯れた声なのにド後列に座っている私のところまでノンストレスで台詞が聞こえてきたので慄いた。しかも、声死んでるのに場面によって声のトーン全然変わるんだよなぁ。あんなに制限されててもここまで巧みに喋れるのかと、単純に感心した。プロの手腕だなぁ。どういう発声の仕組みなんだろう。

そんな技術に長けた金ちゃんが投入された今回。
ここ最近は割とぴよぴよの若手が若さと勢いで演じる大山金太郎が多かったのだけど(昨年ののすけと池岡はまたちょっと違うが)、ここにベテランが来たことで、味方伝兵衛の芝居もだいぶ変わっていた。5度目にして、観たことない伝兵衛が観れたのは面白かったな。若手を「育てる」立場に寄りがちだった味方が、遠慮なくフルスロットルでぶつかれる相手と芝居している姿が観れて嬉しかった。

そしてもう一人の初熱海メンバー、りゅきさん。2015年「いつも心に太陽を」ぶりの春の紀伊國屋ホールつか作品公演。かつて「いつか大山で観たい」と思っていたりゅきさんが、熊田をやれる年齢になって戻ってきた。長くおたくやってると良いことあるね。
りゅきさんの熊田は基本的に引き算がない。石田明だったら抑えた芝居にしてきたであろうところも、全力で押してくる、若くて熱意溢れる熊田留吉。その押しの強さに負けない味方伝兵衛の芝居の体幹の強さ、どれだけ押されても自分の芝居の緩急を自在につけられる一色金ちゃんのしなやかさ。男性キャスト3人のパワーバランスがとてもよかった。キャストの平均年齢の若さに対して、ぐっと成熟した熱海だった。

  • 浜辺のシーンの話

一色くんはとにかく全てがうまいんだけど、浜辺のシーンから先が初めて見る解釈でずっとびっくりしてた。聞いたことない「バスから降りて歩きました」を聞いた。あの切り出しのセリフでぞわっとしたのは多分2017年のまりお金ちゃん以来だし、もちろんその時とはまた違った種類の金ちゃんで、ここへきて新しい浜辺のシーンが観れたことに興奮した。

なんかさ~一色金ちゃんは本当にピュアにアイちゃんのことが好きなんですよ。好きなんだけどずっとやり方が間違っていて、伝え方もへたくそで、アイちゃんには思いが伝わらないままあの事件に至ってしまう。あの結末しかなかったのだと感じる可哀想な金ちゃんを久しぶりに見たし、そんな真っ直ぐな金ちゃんの芝居がめちゃくちゃ上手かった。
そんでまいちゅんさんのアイちゃんが、その思いがミリも響かない虚無のアイ子だからさぁwもう、ずっっっとすれ違ってるってるというか、暖簾に腕押しというか、とにかく何も届かないんですよ、金ちゃんの気持ちが。あまりにも虚しい……。

ちなみにまいちゅんさんは水野も"無"なので、全体に男たちの気持ちがそのまま身体を素通りしていてすごかった。無味無臭すぎる……w(声が通って滑舌がいいので、台詞を聴くのにストレスが全くないのはよかったですよ)

  • けーーーーちゃん♡

みんなの大好きなけーちゃん♡ちょこちょこ飛び入りしてるとは聞いてたんだけど、千穐楽もしっかりいた。しっかり出番増えてた。暇なのかけーちゃん。
飛び入りのくせにやたらビジュアルがよくて、失いかけていたけーちゃんの土方さんリアコの人格が復活しそうだった(笑)

以下、千穐楽出番メモ。
・二人のアイランドの後ろでココナッツを手にはしゃぐ(アロハシャツ、サングラス、水色のウィッグ)
久保田大石が三輪さんの物真似で暴れている間、ずっと後ろで爆笑していて大変楽しそうだった。多分紀伊國屋ホール内でけーちゃんが一番楽しんでた。

・クソミュのバック(赤い小人衣装)
なんかふわっと追加されてた。

・ハリポタパロの茶番に全身タイツで投入
パロディコーナーのオチとして、全身タイツ姿でセンターに引き摺り出されたけーちゃん
味方「挽回しろ!!」
圭ちゃん「挽回!?これで!?全身タイツぞ???」(クソデカボイス)

どうでもいいけど、令和4年にもなって創くんの謎にクオリティの高いドビーに再会すると思いませんでしたね(2014年にもやってた)

・予告編蒲田中村屋(りゅきヤスと殺陣)
詳細は後述

  • 予告編千秋楽ver.

【飛龍伝90】
第一機動隊隊長大石くん&局長松本さん
→山崎役で一色くん

蒲田行進曲
監督創くん(生ナレ)、河本
→小夏まいちゅん(ヤス階段落ち直前の雪のシーン)
中村屋圭ちゃん&ヤスりゅきで殺陣
→銀ちゃん味方登場で階段落ち

けーちゃんの中村屋とりゅきのヤスが刀を交えた瞬間、あの夏のトラムに通っていた私の魂が爆発して死にそうになった。なにこれ、歴史のやり直し?円環?俺たちは繰り返しているのか???
という感じだったし、その後のりゅきのヤスの「銀ちゃん、だーーいすき!」がフルで1公演やったか!?くらいの仕上がりだったのでなんか…もう…ねぇ……(語彙を失ったおたく)

はーーーーー十三回忌、味方銀ちゃんとりゅきヤスで蒲田行進曲リベンジマッチをやってくれ……。


そんなこんなで、正直熱海は飽きているのに、今年もしっかり楽しんでしまった(笑)
RUPの熱海に関しては味方の跡継ぎが現れるかどうかが最大のポイントなのだけど(あっくんのことは一旦置いておくとしてw)(あっくんはいつかディープ山崎をやろうね)、ここへきて一色金ちゃんを見たおかげで、また無限の可能性に気づかされてしまったなぁ。私たちには、まだ見ぬ浜辺のシーンがいくらでもあるのだ……。

この新春つか作品公演をいつまでやれるのか、という問題もあるのだけど、願わくばこの先もずっと、春の紀伊國屋ホール熱海殺人事件なりなんらかのつか作品を見続けたいなと改めて思った。
「時代にそぐわない」なんて声もありますけどね、熱海は普遍なんですよ。いつかこの世から差別がなくなったら「そぐわない」と言われても仕方ないかもしれないけど、そんな世界があと1年2年でやってくるとは、残念ながら思えないですからね。
だから私たちは来年も再来年も熱海が観たいし、ずっと紀伊國屋ホールの座席に座り続けるのだ。と思いを新たにした春だった。


なつのお題箱